研修・イベント
屋久島研修出張 レポート3日目

前々回に引き続き、屋久島研修出張3日目のレポートです。3日目は早朝からカヤックツアーに行きました。
▼屋久島研修出張1日目、2日目の記事はこちらから
早朝カヤックツアー
最終日は朝5時ごろに集合し、まだ薄暗い時間からカヤックに乗りました。朝日が昇るのをカヤックに乗りながら見ることができました。朝日が水面に映って光の道ができ、水面と一緒にゆらゆらと揺れている景色がとてもきれいで感動しました。

カヤックで下りながら、川の途中にある小島に上陸して朝ごはんを食べました。ガイドさんがキャンプ用の調理器具でチーズリゾットを作ってくれました。自然の中で作ってもらい、食べた朝ごはんはとてもおいしかったです。

安房川~照葉樹林
安房川の水は透き通って下が見えるほど綺麗でした。藻が生えているわけではないのに少し離れて見ると川の水面は緑色でした。周りの山に生える植物の緑が映って緑色に見えるそうです。綺麗な緑色の水面は初めて見たので、屋久島の自然ならではの景色だと思いました。

屋久島は花崗岩の隆起によってできた島であり、花崗岩の上や隙間から植物が根を張って森を形成しています。森の中からだと自分たちの足元が大きな花崗岩の塊だということが実感できなかったのですが、川から森を見上げてみると、その様子をまざまざと確認することができました。

実際に石の上に根が張りめぐらされ樹木を支えている姿を目の当たりにし、過酷かつ特殊な環境で生き残る植物の生命力に圧倒されました。

またカヤックツアー中には様々な種類の蝶が飛び回っており、多くの種類の蝶が生息しているのも食草をすみ分けられる屋久島の多様的な自然があってこそだと感じました。

まとめ
今回の旅では、ガイドさんが私たちの希望をもとに道程を変更してくれるなど臨機応変な対応をしてくれたことで、より満足度が高いツアーになりました。ガイドさん自身が楽しそうにツアーを率いてくれているのも印象的で、その姿が素敵だなと感じました。私たちも「植物が好き」という気持ちを忘れず、自分自身が楽しんで仕事をしていきたいと思いました。
土壌の大切さ
屋久島は花崗岩の上に成り立つため、植物が育つために必要な栄養素が極めて少ない環境です。しかし屋久島には巨木が多く、豊かな森林を形成しています。有名なヤクスギは、江戸時代に伐採した切り株が風化することなく、硬いまま、現在も白谷雲水峡に残っています。ところが、鹿児島県の林業試験場でヤクスギを栽培したところ、打ち込んだ釘が手で抜けてしまうほどやわらかいヤクスギに生長したというデータが残っています。
ヤクスギは屋久島の土壌が貧栄養であるおかげで生長が遅くなり、その分組織が密となって硬く生長しているのです。同じ樹木であっても土壌の性質により植物が大きく変化することをヤクスギを通して実際に感じることができました。
これからはもっと土壌環境をよく観察し、ヤクスギの事例を交えつつ、土壌というものが植物にとってどれほど大切なのかを説得力を持ってお客様に説明し、よりよい環境を提案していけたらいいなと思います。
気温の変化にも対応できる植栽を
屋久島は日本列島の植生の縮図といわれているそうです。その言葉の通り小さな島の中でしたが、島内を歩くだけで北方の針葉樹林から南方の亜熱帯林までの植生を実際に観察することができました。
その植生を生みだしているのは、起伏が激しく、島内で標高の差が大きいということが一因に挙げられます。標高は100m高くなると、気温が0.6℃低くなり、標高の差は言わば気温の差とも言えるでしょう。隣り合った環境においても垂直的な標高の差が生まれる屋久島において、その僅かな気温の差がそのエリアで何が生育できるか決めています。植物にとって気温という環境がどれだけ大切かということを、今回の屋久島の研修において目で見て感じて学ぶことができました。
近年東京は地球温暖化の影響でどんどん気温が高くなってきており、刻々と変化する気候に合わせた植物の提案が重要となってきています。現在お客様に提案している樹種についてもこのまま気温が高くなれば、何年か後には植栽できない状況が訪れるかもしれません。
今後気温の変化により、今までの経験が通用しなくなってくるかもしれないという点を頭にいれて、多種多様な気温・気候の環境の植生について勉強し、その環境に応じた新しい樹種について提案できるようになりたいと思いました。