造園
造園社員の植物ノート~キク(菊)・重陽の節句~

9月に入りましたが、まだまだ残暑が厳しいですね。 秋が待ち遠しい今日この頃です。
突然ですが、9月9日は何の日かご存じでしょうか? 3月3日は桃の節句、5月5日は端午の節句というのは有名ですよね。実は9月9日は「重陽の節句」または「菊の節句」と呼ばれているんです。
今回は「重陽の節句」について、ご紹介いたします。
重陽の節句とは
9月9日の重陽とは重九ともよばれ、陽数の九が重なる最大数の良き日と言われています。日本で一番古く残る記録では、685年9月9日「日本書紀」に重陽の宴をしたと残っており、平安時代になると重陽の節句は宮中行事として慣例化していきました。キクは健康に効く薬花としても大変重宝されていたようです。
中国ではこの日、陽が極まって逆に陰を生ずる日として厄除けの行事が行われ、キクと同じように長寿の象徴とされた「翁草(おきなくさ)」や、キクの別名「千代見草(ちよみくさ)」なども食用に使われました。 また、キクの花園を流れる川の下流で、キク花が漬かった水を飲んで長寿になったという「菊水伝説」もあります。
日本でも能の演目にキクの露の霊水で不老不死を得た「枕慈童」という曲があります。そこでもキクの花が長寿や健康の象徴として考えられていました。
重陽の節句では、キクの花びらをお酒に浮かべて菊酒として飲んだり、湯船に浮かべて菊花湯として入ったり、キクの薬効で夏の暑さで疲れた体を労っていたそうです。
次に、上記のように古来より大切にされてきたキクの基本情報についてご紹介いたします。
キク(菊)の基本情報

名称 | キク(菊) |
科名属名 | キク科キク属 |
開花期 | 9月~12月ごろ |
草丈 | 0.3~1.5m |
キクは中国産のチョウセンノギクとハイシマカンギクを中心に、様々な種が交雑されて生まれた園芸種です。伝統的な和ギクのほかに、欧米で改良された洋ギクもあり多種多様。 多年草で耐寒性があり、丈夫な植物です。
野沢園の現場でも花壇の植替え作業時にキクを使用したことがあるのですが、その時はつぼみがどんどんできて、9月中旬から11月下旬までおよそ2か月間絶えず花が咲き続けていました!本当に丈夫な植物だということを実感しました。
先ほど多種多様といいましたが、実際に野沢園でも取り扱ったことがあるキクの種類を一部ご紹介いたします。
花が小型でポンポン咲きのキク(菊)
花びらが丸く集まって咲き、その形がポンポンに似ているキクの仲間を指します。ピンポン玉のようにまん丸で愛らしい見た目が特徴です。切り花にしても日持ちが良く、お供え花としても人気があります。


デコラ咲きのキク(菊)
花全体にボリューム感があり、華やかに見えるキクです。フラワーアレンジメントやブライダルなどの装飾にも多く利用されています。名前の「デコラ」は「デコレーション(装飾)」に由来しています。


スプーン咲きのキク(菊)
花びらの先端がスプーンのように反り返った形状を持つキクのことを指します。見た目に独特の立体感があり、観賞用として人気があります。

キクは仏花としてのイメージがまだまだ根強い印象ですが、昨今の品種改良により花の形から花の色まで実に多種多様な進化を遂げていて、様々なイベントや行事にも用いられています。
皆さんもぜひこの機会に、重陽の節句やキクを楽しんでみてください!
▼参考文献
・一般社団法人 白川学館 和学教授所 「9月9日 重陽祭」
・「五節供に和食を」推進委員会 「重陽の節供」
・鈴木庸夫『ヤマケイポケットガイド⑪ 庭の花』(2000)p.248キク (株)山と渓谷社